石山修武教授退官記念シンポジウム「これからのこと」


3月30日(日)の午後、早稲田大学大隈講堂(大講堂)で石山修武教授退官記念シンポジウム「これからのこと」を聴講してきました。錚々たるシンポジストだったこともあり、聴講希望者が殺到したそうです。私とつれあいは幸い2階最前列の席をゲットしました。大講堂に入りきれなかった方のために、小講堂と別の校舎の教室を中継会場にしたそうです。
安藤忠雄さんの講演がすこぶるインパクトあり。
出世作住吉の長屋。長屋を切ると隣の家が倒れて来るかも・・・とも思ったけど、「どないかなるやろ」「なったら、なったでどうにかすれば良い。」とやってみた話。
京都の高瀬川沿いのビルを再開発した時、水辺に降りられるのは危険と行政に止められて、「水深15cmの川で溺れるんだったら、そういうこと。」と思ったという発言には、リスクを遠ざけるのではなく、リスクから身を守る力をつけることが子どもには必要だし、真の危機管理だということかなぁと思いました。「境界は越えなくてはならない。」という言葉も印象的でした。しかも、関西電力主催の講演会に登壇することを条件に、付近の電柱地下化も実現したそうですよ。タフネゴシエーター
某日本で一番影響力のあるマル暴の方のお家を見下ろす、セコムが開発した傾斜地に建つマンションの話には大笑いしました。オチのある話を入れるのは、さすが関西人やね〜。
「石山さんにはケンカの仕方を教わりました。」と語ったのは、一関の伝説的ジャズ喫茶『ベイシー』店主菅原正二さん。
安藤さんと石山さんには、思考の射程が長く(20年以上かかるプロジェクトもあるみたい)人と関わることを厭わず、タフに行動する。頼まれなくても設計し、売り込むという共通点がありました。
インダストリアルデザインの草分け、栄久庵憲司さんも車椅子で登壇され、「これからのこと」というタイトルが素晴らしいとおっしゃいました。私も退官記念に未来を語ること、全部ひらがな(和語)のタイトルがかっこいいなと思っていたので、うれしかったです。栄久庵さんは広島出身で終戦時は海軍兵学校に在学。戦争という凄絶な無を体験して、有が欲しい!物を作ろう!ということで工業デザインの世界に進むことになったそうです。デザインしたキッコーマン醤油の卓上瓶をメモを取りながら、記憶で描いてみましたが、似ても似つかぬ姿になりました。私って観察力がないな・・・。
石山教授の教える、人を育てるという点では、限界をつくらない、オフリミットな生き方を学生に見せ、共に行動させていることがすごいと思います。

石山教授のちょっと皮肉屋でシャイなところが言葉の端々ににじみ出ていて、長時間が苦にならないシンポジウムでした。