日本の作家109人の顔


上橋菜穂子さん講演会の後、同じ日比谷図書文化館で林忠彦写真展を見てきました。入場料300円を券売機に入れると、写真中央のレシートのようなものが出てきて、入り口のゲートにQRコードをかざすと入場できるスタイル。
いただいた無料パンフレットはブックレットになっていて、内容が充実していました。
林忠彦さんが撮影した文士の顔はどれもこれも圧倒的な存在感。こんな風に撮ってもらえるなら、作家から写真家へのご指名もかなりあったのではないかな?
開いたページの写真は、左:織田作之助 右:太宰治
(写真をクリックすると拡大します)
この太宰治の写真はすごく有名ですね。撮影エピソードがキャプションで紹介されていました。
 織田作之助を銀座の酒場「ルパン」のカウンターで撮っていたら、安吾さんと並んで座っていた男がわめきはじめました。「おい、俺も撮れよ」。「あの男は一体何者ですか。うるさい酔っ払いだなあ」って訊いたら、「今売り出し中の太宰治だよ」って、誰かが教えてくれたんです。僕は、一つしか残っていないフラッシュバルブを使って、当時はワイドレンズがなくて引きがないから、便所のドアをあけて、便器にまたがって撮ったんです。

                 *

三島由紀夫の撮影エピソードは読みようによっては激辛な内容。過去形なので割腹自殺後に書かれた文章なのでしょうけれど・・・。
よく昔から「四十にして惑わず」といいます。今では、五十すぎでしょうが、五十すぎて一流といわれる人は、顔に年輪がつくといいますが、その人の個性や偉さというものがあらわれてくるものです。そこをぎゅっとつかめば、本当にいい写真になる。ところが、三島さんだけは、この「顔のきまり」があてはまらなかった。僕の撮ったなかで一番むずかしい顔の持ち主だったと思います。そう感じたのは、三島由紀夫さんだけでした。


                 *

没年を確認しながら、写真を見たのですが、60歳台で亡くなられた作家も全員結構なお歳に見えました。今の日本だと75歳以上の外見。寿命が伸びたせいなのか、健康状態が良いせいなのか。はたまた精神年齢が低くなっているからなのか・・・。
いずれにしても、男も女も顔は自分自身の履歴書と心得て、味わいのある顔をめざさなくちゃ!ですね。