ターナー展


珍しく前売り券を購入して、東京都美術館に『ターナー展』を見に行きました。平日午前にもかかわらず、大勢のオーバー65のご夫婦が来場していました。私がこれまでに行った美術展の中で史上最高のペア率だったんじゃないかな?ちなみに私もつれあいと一緒に入場しましたが、館内ではまったくの別行動。美術展に一緒に行く時はいつもそうしています。頃あいをみて、メールで連絡を取りあったり、なんとなく出口付近で落ち合えたり・・・って感じです。
ターナーは光と空気の感じを表現することをとても大切にしていた画家だと思いました。快晴の風景はほとんどなくて、雲間から光がさしていたり、荒天の空に少しだけ青空がのぞいていたり・・・ドラマチック。マジック・ザ・ギャザリングのカードのイラストや映画『指輪物語』(ロケ地はニュージランドだったみたいだけど・・・)の映像はターナーの風景画の曾孫って感じかな?
ヴェネツィアを描いた絵画群で思い出したのは、ベタですが、ルキノ・ヴィスコンティの『ベニスに死す』。マーラー交響曲第5番 第4楽章が聴こえてきそうでした。海とヴェネツィアが結婚する儀式として、ヴェネツィアの総督は年一回、船で沖に漕ぎだして、海に指輪を投げ込んだそうです。その様子を描いた絵も展示されていました。海上都市の繁栄と退廃。「行ってみたいね〜。」と若い女の子の二人連れがつぶやき合っていました。
展示は10のコーナーに分けてありましたが、コーナーごとに壁紙の色を変えているのが面白かったです。特にイタリアとヴェネツィアのコーナーは唐草模様入りの壁紙。19世紀の北ヨーロッパの人々にとって、イタリアは特別な憧れの地だったことを暗示するようなゴージャスさでした。
晩年に色面の構成だけの抽象的な雰囲気の絵画を発表せずに多数残していたのは、先月見てきた、ギュスターブ・モローと似ているな〜と思いました。ものの形があわあわと溶け合っているような最晩年の作品『海に沈む夕陽』も気に入りました。