ライブ@ラカーニャ いいうたいろいろ夏

かかわらなければ~塔和子をうたう

かかわらなければ~塔和子をうたう

7月14日(土)山種美術館の後、恵比寿でちょっとお買い物。渋谷から井の頭線に乗って下北沢へ。前回のラカーニャ公演・春は3月31日で保育業界の大みそか(入園準備の天王山!)だったので断念。私とつれあいにとっては半年ぶりの沢知恵さんのライブでした。
今回は中村哲さんというサックスプレイヤー&アレンジャーがゲスト出演されました。私は存じ上げなかったのですが、18歳の時からこの業界で過ごし、年間200曲以上アレンジの仕事を受けた年もあったそうです。想像するだにhardですね。現在は中島みゆきさんの夜会コンサートにも参加しているそうです。
ソプラノサックス・アルトサックス・ピアニカを適宜持ち替えて、沢さんの歌とピアノにからみ、すばらしいアンサンブルでした。ソロも良いけど、バンドや室内楽で呼吸を合わせて音を作り上げていく感じ・・・好きだなぁ。そこにお互いの信頼関係があると音で会話しているような幸福感が伝わります。『はじらい』でのストリートオルガンみたいな優しい響きのピアニカ、『胸の泉に』での力強いアルトサックス。時に尺八を思わせるようなソプラノサックス。堪能しました。
今回沢さんは金環日食の感動から、谷川俊太郎さんの『朝のリレー』に曲をつけて歌っていました。数年前ネスカフェの新聞広告に使われていたので、ご存知の方も多いと思います。私も小学校中学年〜高学年のお話会で時々暗誦していた大好きな詩です。

  朝のリレー     谷川俊太郎

   カムチャツカの若者が
   きりんの夢を見ているとき
   メキシコの娘は
   朝もやの中でバスを待っている
   ニューヨークの少女が
   ほほえみながら寝がえりをうつとき
   ローマの少年は
   柱頭を染める朝陽にウインクする
   この地球では
   いつもどこかで朝がはじまっている

   ぼくらは朝をリレーするのだ
   経度から経度へと
   そうしていわば交替で地球を守る

   眠る前のひととき耳をすますと
   どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
   それはあなたの送った朝を
   誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ


中村さんのソプラノサックスが入ったのですが、本当に素敵でした。私は宇宙から吹いてくる風を感じました。宇宙は真空だから、風なんて吹かないと思うのですが、イメージはそれくらい壮大だったのですよ。帰り道でつれあいに話すと、つれあいは「アフリカかどこかの赤い大地が鳥の視点から見えて、ゆるく弧を描く地平線に朝日がさしてくるのが見えた。」と言っていました。

今年私は初めて保育室で0歳児を担当しているのですが、《ミラーニューロン》というものに関心があります。生まれたばかりの赤ちゃんの顔に正対して、舌を出すと赤ちゃんは真似るそうです。その働きの元になるのがミラーニューロンらしいです。本当に子どもは真似が好き。真似して学ぶ。真似して遊ぶ。真似して心安らぐ。そんな姿を日々観察しています。人間の周りの人と同調したい、通じあいたいという欲求は歌や踊りの芸能や宗教的法悦の原動力なのではないかしら?特に歌と踊りはリズムと呼吸でシンクロ力が抜群です。落語(相性の良い噺家さん)や沢さんのコンサートでは、聴くだけですごく色々なイメージが喚起されるのですが、これって内なるミラーニューロンの働きなのではないかと思いました。送り手と受け手ではもちろん描いているイメージは別々なのですが、送り手の抱いているイメージの強靭さは絶対伝わると思うのです。小三治師匠言うところの「噺が見えているかどうか?」という部分。談志師匠の言っていたイリュージョンも同じなのかな?この働きは本来なら小ホールが限度かもしれないけど、もっと大きな対象に伝えるためにショウビジネス的演出や宗教儀式や建築や荘厳(装飾)が生まれたのかな・・・なんてことをブツブツ考えました。

『大きな木』は沢さんの作詞・作曲。小田原の少年院にコンサートに行った時、出会った樹齢400年のクスノキにインスパイアされて作った歌だそうです。10/28のログに写真がありましたので貼り付けます。http://www.comoesta.co.jp/hitokoto/index.cgi?p_start=31
保育室の2階のテラスのすぐそばに欅の木があって、木の葉が風と光でチラチラするのを0歳児が飽かず眺めているのを「そんなに好きなの?やっぱり私たちは森から草原に出てきたサルなんだね〜。」と日々思っていたので、なんだかうれしくなりました。木の与える安らぎって格別なものがあります。小田原少年院は近々廃止になるそうです。お寺から少年院になって、次は何になるのでしょう?クスノキにはそこに立ち続けて、遠くから少年たちを見守り続けてもらいたいです。

大きな木と言えば、

おおきな木

おおきな木

が有名ですが、
木はいいなあ

木はいいなあ

も好きです。

『いっぽんの木』(月刊 かがくのとも 1994年6月号)は残念ながら現在品切れ中。一本の欅に寄せる人々の思いに読むといつも涙腺が刺激されてしまいます。
http://www.fukuinkan.co.jp/magadetails.php?goods_id=22277


                   ♪
この日はタイトルの元気さに油断して、電車の中で下の本を読んでいましたが、文中でワゴン車が南三陸町に入ったところで、涙がだ〜だ〜湧いてきて、ストップ。

そんなだったので、アンコール曲の『手のひらを太陽に』でも被災地の光景を思い出して涙腺が決壊寸前になりました。沢さんも言っていましたが、子どもを産んでから急に涙もろくなる女のひとって多いと思います。時系列の想像力の範囲が子どもが生きるであろう未来にもリアルに及んでくるし、ちょっとした人の情けが染みるようになるのはありがたいことです。性別や子どものあるなしに関係なく年をとるってそんなことかもしれません。新聞読んで泣いちゃうこと、私も結構ありますよ〜。

下北沢・ラカーニャを後にして、今度はつれあいの音楽仲間を応援に曙橋バックインタウンへ。ライブハウスのハシゴは初めての経験です。
美味しいピザとパスタをいただきながら、キングストントリオおたくの祭典(失礼!)の後半から聴かせていただきました。幸せそうなおじさんたちに幸福のお裾わけをいただきました。音楽ってプロでもアマチュアでもやっぱり良いですね!