朱雀家の滅亡


同僚のUさんに誘っていただき、『朱雀家の滅亡』を観に新国立劇場へ。
この作品は三島由紀夫の追悼公演としても上演されたそうです。1967年に初演されているので、割腹自殺(享年45)のおよそ3年前の作品なのですね。戯曲仕立ての遺言のようだと思いながら、観ていました。
《「何もするな。」お上の目の中に詔を聴いた》・・・というようなセリフが一番心に残りました。宗教も思想も純粋であればあるだけ狂気がその苗床なのだろうし、人は結局、自分が聴きたいことだけを聴きとるのだとも思いました。
春・秋・夏・冬の四季の中、居間のダイニングテーブル(朱雀の象嵌が入っていることが冬の場面で初めてわかる)と鳥居(?)のまわりでたった5人の出演者が展開するドラマの形式性が面白かったです。出演者同士はほとんど触れ合うことがなく、テーブルの近くに配置された椅子もまた分身のようにお互いの距離感を現わしていました。
戦前と戦後、男と女、文と武、生と死、貴と賤・・・対立する概念が重層的に並んでいましたが、平成の世の今となってはすべてがグズグズに混じり合ってしまっているので、一部に共感しがたい部分がありました。終盤の十二単姿の璃律子さん出現には大いなる違和感が・・・。
三島由紀夫は主人公の朱雀経隆のように、天皇を「お上」と呼んでお仕えしたかっのかな・・・そんな戦前のお公家さんへの強いあこがれを感じました。

楽屋にこんなお花が飾ってありました。大震災の後、花をロビーに飾るのはやめているのでしょうか?それとも新国立は楽屋が広いから昔からこうだったのかな?