魔女と森の友だち

魔女と森の友だち

魔女と森の友だち

昨日久しぶりに区立図書館の絵本コーナーに行きました。普段はパソコンで蔵書検索して、リクエスト、慌ただしくカウンターで受け取ることが多いのですが、書棚を見て、目に飛び込んできた本を借りる方がワクワクします。
8冊借りてきた中で一番気に入ったのがこの絵本です。作者の湯本香樹実さんは、『夏の庭』の作者として有名です。中学・高校の受験問題で今も使われることが多いのではないかなぁ?おじいさんが北海道出身で、料理も洗濯も掃除も出来る実は生活力のある人だったとういう設定が好き。映画も日本版『スタンド・バイ・ミー』という感じで大好きです。
この絵本の主人公は自分に自信がない魔女。大きな口も曲がった鼻も気に入りません。ある日、いつも魔女を力づけてくれるかがみに「友だちになるなんてむり」と言ったら、かがみが割れ、魔法が使えなくなってしまいました。魔女は自分の家に数年間引きこもって鬱々とした日々を送ります。ある晩、子どもが高熱を出したハタネズミの親子が魔女に助けを求めにやってきました。苦しむぼうやを見て、魔女は先祖の残した薬草の本を取りだし、薬を調合、必死に呪文をかけます。翌朝魔女は森のおくの泉に水を飲みに行き、水に映った自分自身に笑いかけることができました。薬が効いてぼうやは回復。魔女はうでのいい医者として、森のどうぶつたちに慕われるようになり、森じゅうのどうぶつが魔女の友だちになりました。でもときどき、魔女は古い友だちに会いに、森のおくのさみしい泉にでかけてゆきます。というのがあらすじです。
かがみは「ぼく」という人称で魔女に対して語っているのですが、魔女の内なる自己という感じがしました。(ユングのいうアニムス?)かがみが割れて、自己が分裂、引きこもりの日々の後に、弱きものに頼られ、必要とされることで、アニムスが再統合され、回復する。そして、以前よりも自己肯定感を増し、より成熟するというお話なのかなぁと思いました。
理屈っぽい話は横に置いて、自分の経験と照らし合わせると《仕事があって、誰かに必要としてもらえるって幸せなことだ〜》というのがこの絵本の一番の感想です。でも、そこでめでたしめでたしと終わらずに、時々さみしい泉にひとりで出かけていくという所がまた素敵だと思いました。
夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)