人でなしの恋

 先月の17日に新橋の内幸町ホールで鎌田弥恵さんの語りを聴いてきました。演目は「藤沢周平作 雪の比丘尼橋」「レオ・パスカーリア作 葉っぱのフレディー」「江戸川乱歩作 人でなしの恋」でした。
 「葉っぱのフレディー」はズームイン!!SUPERに出演中の今中麻貴さんが語りました。数年前に勤務先の保育室に今中さんのお嬢さんが通ってくれたことでご縁ができました。今回は職場の仲間7人が駆けつけました。今中さんは変わらず美しく、笑顔がとびきりキュートでした。
 「藤沢周平作 雪の比丘尼橋」「江戸川乱歩作 人でなしの恋」の語りは鎌田弥恵さん。その昔ラジオドラマ「君の名は」のナレーターをなさって、オンエア時間に女湯を空にしたという伝説の方です。80歳を超えているとはとても思えない迫力でした。
 特に「人でなしの恋」は全編主人公が過去を追想してのモノローグという小説の構成と相俟って、語りを聴きながら、19歳の若妻だった主人公と一体となって、夜更けに暗い庭を通って、蔵の二階をのぞき見しに行ったような気になるのでした。のぞき見に行ったものの、落とし戸がしまっていたために二階は見えず、盗み聞きすることになるクライマックスは、ホールで語りを聴いているワタシと微妙にシンクロして、本当に足元からのぼってくる冷気さえも感じるようでした。「アンナと過ごした4日間」という映画のHPの解説に、のぞき見はとても映画的な設定だと書いてありました。盗み聞きはとても語り的な設定と言えるのかもしれません。
 語りにしても、落語にしても、映像がないために最終的には観客一人ひとりの想像力にすべてがゆだねられています。だからこそ、演者と客席が一体となっている至福の瞬間が訪れた時の喜びは格別です。聴き手がいなければ成立しない共同作業であることが語り芸の醍醐味だと思います。
 公演の後、新橋小川軒カフェに立ち寄り、モンブランとコーヒーでお茶にしました。原田治さんのブログで読んで、食べたいな〜と思っていたモンブランは自然な甘みでとても美味しかったです。