いわさきちひろ×佐藤卓=展

今日はいわさきちひろさんの命日です。没後40年だそうです。
ちひろ美術館・東京は我が家から徒歩10分以下の場所にあります。万歩計で確認したところ、727歩(約470m)でした。徒歩圏にすてきな美術館があってうれしいです。
ブロガー特別内覧週間という企画のご招待で、開館早々の10時に伺ってきました。
http://www.chihiro.jp/tokyo/museum/schedule/2014/0107_1836.html
佐藤卓さんがプロデュースされた《デザインあ展》がすごく楽しかったので、展示がどんな切り口でなされるのか・・・期待はいやがうえにも盛り上がります。《デザインあ展》の感想は↓
http://d.hatena.ne.jp/fumfum235/20130427

まずは展示室1 

採集というだけあって、作品は標本箱をイメージした箱の中に入っています。


あれれ?この後ろ姿は湯婆婆(ゆば〜ば)?それともこの美術館館長の黒柳徹子さん?

答えは佐藤卓さんデザインのチロリアン(千鳥屋)のパッケージの人物たち3D版でした〜。


ふたりの青年は横顔なのでわかりにくいと思いますが、みなさんの口元にご注目。チ・ロ・リ・ア・ンと言っています。ちなみに湯婆婆は「ん」担当です。

展示室2は

入り口の自動ドアが開くとパッと照明がつきました。
佐藤卓さんが選んだ絵はスケッチや線画。シンプルなモノクロームの世界に線の魅力が満載でした。柔らかい線、鋭い線、空間や光やにおいを感じる線・・・植物スケッチには生命感が吹きこまれていました。
私もちひろさんの描く鉛筆の線が大好き。使う当てもないのにフラフラとショップで月光荘の8Bの鉛筆を買ってしまったくらいです。鉛筆画やペン画やデッサンをこれだけの点数まとめて見たのは初めてなので、うれしかったです。線の表現力にはちひろさんの書家としての修練が生きている感じがしました。
室内は他の展示室より暗めに設定されていて、一面の天井の低い壁面以外は、作品(額)一点一点にスポットライトを当てていました。光がスカラップ模様を描いています。

展示室3は
ちひろの描く子どもたち》
ここにはVery Best of Chihiro とでも言えそうな人気作の原画が揃っていました。ちひろファンには感涙ものだと思います。絵の中の子どもたちの瞳や手や膝小僧の愛らしさと言ったら!

展示室4は

  *上のふたつのキャプションはクリックすると拡大します

ちひろの複製画とそこからインスパイアされたものを特製の箱のなかに展示したもの。遊び心&こども心がいっぱい。

赤ちゃんのフォルムと石積みのフォルムの相似が面白い!


流木にセリフを語らせてみたい感じ。炉端でお年寄り(木の精)が茶飲み話をしている姿に見えました。



植物画の線の見事さ!生あるものと生なきものの対比。人工物と自然物の対比を感じとりました。


ブランコの前には砂遊びの痕跡が・・・


この絵のタイトルは《葛温泉高瀬川で遊ぶ子どもたち》
実家のある大町市の風景。1956年の作品なので、私は生まれていませんが・・・河原の大きな石は花崗岩が多かったかな?モノクロですが、すごくリアル。
手前のオブジェはいかにも河原に落ちていそうなもの。写真ではわからないと思いますが、佐藤卓さんデザインのロッテペパーミントガムの包装紙も隠れていました。

他の作品にも火山の噴火物が石化したものとか、ガラス石とか、サンゴとか、ヘンな形の枝とか、子どもの頃好きだった自然素材が沢山使われていて懐かしかったです。


季節柄 8月31日、夏休みの宿題の絵を必死で仕上げている子どもに見えます。長そでみたいだけど・・・(笑)
私は半泣きになりながら、グラジオラスの絵を描きました。。。
昭和の子どもの夏の花は朝顔、ひまわり、おしろい花グラジオラス、カンナ、ダリア、ホウセンカというラインナップだと思いませんか?

             *

小さな箱には上の面に丸い穴があります。何のためかな〜?

穴から作品に光が当たっています。天窓だったのですね。
ちなみに大きい箱の方はライトが内蔵されているようです。
中の絵は『母さんはおるす』より《風に葉をゆらすヤシの木》たしかベトナム戦争に取材した絵本だったと思います。鉛筆画の表面を消しゴムでこすったあとが風として表現されていました。



箱の上部は子どものための踏み台をちゃっかり使用して撮影(笑)


この絵は『戦火の中の子どもたち』より。悲しみが黒々と画面の姉弟を取り巻いています。



《鉄条網》『戦火のなかの子どもたち』より 遺作 とクレジットされていた絵の前に爆弾を思わせるオブジェ。

パレスチナで、アフリカで、世界の各地で今も戦火にまきこまれて苦しむ子どもたちが大勢いることを知ったら、いわさきちひろさんはさぞかし悲しむことだろうと思いました。

目を上に向けると、ちひろの線画をパターン化し、さまざまに組み合わせて作ったバナー(幕)が天井から吊り下げられています。


この花火かはたまた江戸小紋の柄か?という模様の元は箱の中で砂場と共存していたブランコの絵の鎖部分です。切り取る 組み合わせる 編集する デザインの妙を味わえました。感動!


安曇野の山々の稜線や野菜の切り方のイラストからの線なども意外性抜群。足し算したり、引き算したり、掛け算したりのデザインの面白さと展示の工夫を堪能してきました。

この美術展のレセプションで佐藤卓さんは以下のようにお話されたそうです。
「子どものことを考えるということは、未来を考えるということ」「人との関係のなかで、ちひろの世界は変化する。ちひろの絵は生きているんだ」
メッセージ しっかり伝わってきました。

夏休みの自由研究なのかな?中学生の姿もちらほら見受けられました。ちひろ美術館は高校生まで無料です!子どもをそして未来を大切にしている姿勢が伝わってきますね。