幼児教育でいちばん大切なこと 聞く力を育てる

外山慈比古さんは『思考の整理学』で有名。英語学が専門なのにお茶の水女子大付属幼稚園の園長職を優先して、所属学会の会長職を断ったというエピソードのある方。
この本では、3歳児以前の教育の大切さを力説しています。フラッシュカードだの英語だのという早期教育を勧めているわけではありません。《バイリンガルへの憧れは愚かなこと》という刺激的なタイトルの文章もありました。五感を磨き、聞く力を育てること、共生意識を育てることが勧められています。

母乳語と離乳語という考え方がとても面白かったです。
母乳語はことばとモノとがいっしょになっている。母乳語は現にあるものについてのことばだから、そこにないものを表すことができない。本当のことばかり。
離乳語はことばはことば、モノはモノ。抽象的なことばがわかるようになる。だから、ウソもつける。
 ウソなんてつけなくていい、と早まってはいけない。ことばは高度のコミュニケーションの手段であるから、本当のことしか言い表せない、なんてことはない、人類は、この世に存在しないことを、ことばで表現し、それを理解することで文化というものをつくり上げてきた。ことばはそれをひきつぎ、次の世代は伝えるのに欠かせないものである。 
 動物にもいくらか言語に似たものが認められはするけれども、この抽象的言語をもつまでに至っていない。動物はウソをつくことはできない。少なくとも、人間のように、美しいウソ、フィクションをつくることは不可能である。
 
おとぎばなしは離乳語を育てるそうです。ごっこ遊びも離乳語を育てる力がありそう。職場の1歳児さんは空の箱の中を覗いて、「バッタ いた」とか、手でお椀を作って、「赤い金魚 いるよ」とか言っています。星の王子さまが飛行士の描いた箱の中に羊を見たように、すでに虚構の世界を共有する力をつけています。この本では離乳語を理解しはじめるのは4歳くらいと言っています。4歳という年齢が幼児の重要な質的転換期であることは有名ですが、実はもっと早くから離乳語を理解しはじめているのではないかなぁと思いました。