長谷川摂子さん

めっきらもっきら どおんどん (こどものとも傑作集)

めっきらもっきら どおんどん (こどものとも傑作集)

児童文学作家の長谷川摂子さんが10月18日にご逝去されました。享年67歳。『めっきらもっきらどおんどん』『きょだいな きょだいな』『おっきょちゃんとかっぱ』『ことろのばんば』・・・好きな作品がたくさんあります。どこかにちょっぴり不穏なものが隠れている感じが好き。・・・石井桃子さんと同じで子どもの頃の心の動きをフリーズドライして脳内に保存し、いつでも新鮮な状態に戻して取り出し可能だった方ではないかしら?
言葉のリズムがすてき。岩波書店の《てのひらむかしばなしシリーズ》は日本昔話の再話。言語感覚、リズム感、音韻の感覚が存分に生かされています。

長谷川摂子さんの講演会には2回参加したことがあります。保育士時代の話がとても面白かったです。ナオキ君という場面の切り替えが難しいお子さんにブロック遊びをやめて給食のテーブルにつくように促す時、ナオキ君にではなくブロックに「ブロックさんナオキ君はご飯を食べてくるから、少し待っててね!すぐに戻ってくるから安心してね。」と言葉かけした話が特に印象に残っています。「ナオキ君には本当に鍛えてもらいました。」とも言っていました。
また、ご自分のお子さんが2歳の時、ぬいぐるみの熊がドアに挟まれて抜けなくなった時、泣きながら「痛いよ。痛いよ。」と訴えたエピソードを紹介して、子どもはぬいぐるみの熊の中にも自分が入っている。自分の関心をひくものは大きな自分自身で、自分自身がモノの中に拡張しているとお話ししていました。7歳までは神のうち・・・《世界は僕だ》《世界は私だ》の時期だそうです。東大大学院哲学科を中退して保育士になり、ヘーゲル研究者(長谷川宏さん)と結婚してからは一緒に学習塾を開いていた方だけあって、子ども理解の経験と理論のバランスが絶妙だと思いました。
子どもがひとりで一心に遊んでいる時、おもちゃの配置はその子の心の世界そのものに見えることがあります。箱庭療法も似ていますね。
もっともっとお話を伺いたかったし、本も絵本も読みたかったです。残念でたまりません。心からご冥福をお祈りいたします。

きょだいな きょだいな (こどものとも傑作集)

きょだいな きょだいな (こどものとも傑作集)

ももたろう (てのひらむかしばなし)

ももたろう (てのひらむかしばなし)