『赤ちゃん・絵本・ことば』谷川俊太郎


昨日は千駄ヶ谷の津田ホールで榊原洋一氏と谷川俊太郎氏のお話を聴いてきました。主催はNPO法人ブックスタート。上の写真は津田ホールの窓からお隣の東京体育館を撮影してみました。カブトガニみた〜い。
図書館司書や読み聞かせボランティアと思しき方々で会場は満員でした。本好きな女の人のたたずまいって何となく共通項があるなぁ・・・私見ですが、あまり化粧は濃くない(ノーメーク含む)、白髪が増えても染めない人が多い、天然素材の服が好き、ストールのおしゃれが好き、グループになって大はしゃぎしない。

最初に小児神経学、発達神経学がご専門の榊原洋一氏によるプロローグ講演「ゆりかごの中の科学者」
休憩をはさんで、谷川俊太郎氏の「赤ちゃん・絵本・ことば」でした。聞き手は草野満代アナウンサー。

「ゆりかごの中の科学者」では赤ちゃんがいかに有能な学び手であるかを語ってくれました。
胎内で視覚以外の四感は育っていること。生まれてすぐの赤ちゃんが大人の顔を真似てアカンベーする写真で有名なミラーニューロンの働きによる新生児模倣。顔への嗜好。特に目元、口元を注視すること。4か月でも因果関係を理解していて、ボールを投げられると両手を出して準備すること。自分が働きかけることで何かが変わるとよろこぶこと。人への理解は顔認知⇒表情認知⇒視線認知⇒共同注視(三項関係の成立と指さし行動)⇒心の理論へと発達していくこと。自然に母語の文法構造を理解する言語発達の道すじなどから、《ヒトの子どもには「自分で育っていく力」が備わっている》という結論に至っていました。
自分の子育てや保育の経験から、「うん。うん。本当にそうだ!」と思えることが沢山ありました。
パワーポイントの最後にご自分の赤ちゃん時代の写真を載せて「ご静聴ありがとうございました」のコメント。写真の子どもの愛らしさも手伝って、その茶目っ気に好感度ますます上昇!でした。

谷川俊太郎氏のお話と絵本や詩の朗読も充実していました。さすが詩人。スパッと切れ味の良いコメントが沢山あったので、列挙してみます。
☆(創造的な仕事は)自分の中にいる子どもをどこまで解放できるかにかかっている。

☆人間の成長の軌跡は右肩上がりではなく年輪のかたちではないか?(中心の子どもの部分は存在しつづける)

☆(『もこ もこもこ』の絵を描いている)元永定正氏は幼児的なものを大人の技術で美しく描く人だった。

☆声はスキンシップの一種。鼓膜も身体。絵本を読んでもらうこともスキンシップ。できれば膝にのせて、同じ向きで絵本を読んでほしい。読み聞かせという言葉は好きじゃない。

☆(子どものための創作では)子どもや孫からのインスピレーションより、自分の中の子どもからの方が大きい。

☆大人の言葉は意味に縛られる。子どもは世界を全体として身体で受けとめている。

☆意味を探さなければならないのは人間の宿命。

☆あいうえお(50音表)はきれいだ。と外国人から言われた。
 ※たしかに周期律表みたいだと私も思いました。

☆身体が緊張している時は無意味なもの(ナンセンスなもの)の楽しさが理解できない。

☆言葉の豊かさは語彙の数ではない。ひとつひとつの言葉の意味が豊かに定義されているかにかかっている。
 ※上の言葉は会場との質疑応答で「詩の作者として、言葉の豊かさのひけつは?」という質問を受けての答えです。メモをとりそこなったので確信はないのですが、谷川氏はここで魂という言葉を使っていたような・・・。落語もそうなのですが、発信者の内部に広く深いバックヤードがある言葉は相手に伝わるし、相手の中の何かを喚起する力を持っていると思います。

千駄ヶ谷将棋会館がある場所だからかな?ホームの水飲み場に王将の駒がついていました。