ナイトキャップ

サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3

サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3

夜寝る前に布団の中で活字を読むことが好きです。下戸なので、それが私のナイトキャップ。15分位読むと睡魔が遅い、あっという間に夢の中です。
上の村上春樹本は借りて来て読みだしたら、以前に借り出して、読了した本みたい。それでも、比喩の面白さや視点の独自性についつい一晩3章位ずつ読んでしまっています。これぞ春樹マジック!て、いうか自分の忘却力の問題か・・?
全然ナイトキャップにならなかったのは、最近では『流星ひとつ』(沢木耕太郎著・新潮社)。28歳で引退を決めた藤圭子へのインタヴューを全編 沢木と藤の対話のかたちにして構成した本。取材後、藤圭子からOKが出ていたにもかかわらず、引退後の本人にマイナスになりそうだからと出版しないでいたそうです。(二人はインタヴューをきっかけに恋愛関係にあったという噂もあるみたい。さもありなんと思えるくらいお互いへの信頼の気持ちと立場や経験の違いを面白がる気持ちがにじみ出ている内容でした。)昨年藤圭子の葬儀後、母についてコメントしていた宇多田ヒカルにも読んでほしくて出版に踏み切ったとか。
19歳で結婚、その後離婚。28歳で芸能界引退は母子でまったく同じ。反復強迫という精神分析学の用語を思い起こしてしまいました。
インタヴューで印象的だったのは、藤圭子の賢さと潔癖さ。芸能界で絶大な人気を獲得することは釣り針を沢山つけた縄を海に流して、沢山の魚を一気に釣り上げるようなもので個人と個人が知り合って好きになることとは質がまったく違うと言っていましたが、比喩の的確さにびっくりしました。
潔癖さは人間関係、日常生活の細部に及んでいるのですが、「他人が使ったお箸を使ってものを食べることができない。」というところだけは私も同じだなぁと思いました。
被虐待体験と解釈することも可能な子ども時代にも心を動かされました。父のことを聞かれると何度も黙りこみ、「話したくない」と藤圭子が答えると、「その質問はやめよう」とさっと話題を切り替える沢木。印象的でした。
そんなこんなで『流星ひとつ』は午前3時までかかって久々の一気読みでした。
流星ひとつ

流星ひとつ