アンナと過ごした4日間


http://www.anna4.com/
1月22日にやっと見てきました。イメージフォーラムでの上映が終わってしまったので、レンタル屋さんで借りるしかないのかな・・・と諦めていましたが、新宿のK'S cinema というミニシアターで16日から1日2回上映しています。
上映開始時刻を勘違いしていたので、約10分遅れで暗い館内に忍び込み、手探りで一番後ろの一番端の席に着席。終演後に入場券を見たら、入場番号は15番でした。つまり、観客は総勢15人。
昨年末の《今年の映画ベスト5》的な新聞記事で何人もの評論家が取り上げていた映画なのに、平日昼間とはいえ、これってちょっと淋しいのでは・・・。私が大学生だった頃は、背伸びして文芸坐岩波ホールに行ってはフェリーニタルコフスキーを見たものだけど・・・。作家性の強い映画は人気がないのですね。
若者よ!安直に理解できて、簡単に泣けるような映画じゃなくて、10年、20年たっても、あの映像、あのセリフはいったい何だったのかな?とふと思い出すような謎に満ちた映画も見ておきましょうよ!な〜んてことを力説したくなってしまいました。書いていて恥ずかしいですが。
この映画が見たくなったのは、上のスチール写真に一目ぼれしたからです。構図は全然違うのですが、教会の煉瓦と手前の家の白壁の色の感じがフェルメールの『小路』にとても似ています。http://www31.tok2.com/home/itoyan/vermeer7%5B1%5D1.jpg
主人公のレオンは病弱な祖母に育てられた気弱で孤独な中年男。病院で雑役夫をしていましたが、文盲に近いのか、発達障害があるのか、社会から半ば見捨てられた存在のように見えます。彼が自宅の壁をいきなりチェーンソーで切り抜いて、窓を嵌めこむシーンが印象的でした。その窓はアンナの住む看護婦寮をのぞき見るために作ったものなのですが、彼が社会に主体的にアクセスする唯一の回路のようにも見えました。
牛の死骸が流れてくる川(冒頭なので私は見損なってしまったシーンです)、アンナの部屋の不思議なせせらぎの写真(王様のアイデアで販売していたりして・・・)、激しい雨音と雷鳴、焼却場の手洗い場、刑務所の調理場の流し台、映画の中に執拗に現れる水のイメージ。ラストシーンの謎。解釈はすべて観客にまかされているのでした。映画は時に目を開けたまま見る夢のようだと思います。映像を自由連想法のように綴って、観客はそれぞれに自分ひとりの夢を同時にみている。そんな映画が好きです。
監督・脚本・製作のイエジー・スコリモフスキ(71歳!)は「説明をするよりも示唆する方が好きなので、繰り返しが多く、極力説明を排除する構成になったと思います。」と書いていました。
映画の後で、丸井本館5階にある『クックコープカフェ』で遅い昼食をとりました。ひとりでも落ち着いて過ごせるお店でした。5階はフロア全体が森ガール御用達という感じで、ゆったりナチュラル。置いてあるグリーンがすべて本物だったので、気持ちが良かったです。